竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
卵くんとの楽しかった日々を思い出して、ポロポロと涙があふれてくる。ママと言って慕って、いつでも私のことを好きでいてくれた。かわいい相槌をうって、笑いをこらえるのが大変だった。
私があの夜、ママになる覚悟ができたと伝えたら、すごく喜んでくれた。それに。
「名前、つけてあげれば良かった……」
パパと二人でつけてほしいって言ってたけど、こんなことになるなら、卵くんじゃなくて名前で呼びたかったな。あなたを産めればよかったのに。どんな姿だったんだろう。
「小さくて黒い竜だったのかな。きっとかわいい竜だろうな……」
その自分の言葉で思い出してしまうのは、あの夜の竜王様だ。小さい竜の姿になって、私に「生まれてくる子に淋しい思いをさせたくない」と伝えてくれた。あの日打ち明けてくれた勇気に、私はちゃんと報いたいな。
「そうだよね……、私、約束したんだもんね」
私はあの日、竜王様に宣言した。もう彼のように淋しい子ども時代を、あなたの子どもに過ごさせないって。私の血でなんとかさせる。話だってするからって。