竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
それならちゃんと守らなきゃ。苦しいけど、きっと時間が解決してくれる。さっきのだって恥ずかしくて逃げたとか、バレバレの嘘でもつけばいい。誰かに笑われても、私には竜王様との約束のほうが大事だ。
「戻ろう……!」
そう決意すると、少しだけスッキリしてきた。とりあえず涙も止まったから、服を整えたら部屋に戻ろう。王宮内の庭だから安全とはいえ、一人でいるのは良くないよね。
(みんな心配してるはず。いきなり走って逃げるなんて、出ていくのが恥ずかしいな)
そんなことを考えていると、ふいに物陰から侍女服を着た人が、こちらに向かって走ってきた。きっと私を探してくれたのだろう。私を見つけると、ハッとした様子で駆け寄ってきた。
「あの、もしかして、迷い人様ですか? お加減でも悪いのでしょうか?」
「え……、あ、大丈夫です」
「顔色が真っ青ですわ。さあ、これを吸って」
「え? うっ……!」
突然目の前の侍女が私の頭をわしづかみし、もう片方の手で口にハンカチを押し付けた。急なことで思わず息を吸うと、そのハンカチには何か薬品が染み込ませてあったようだ。たちまち目の前の景色が歪み、体の力が抜け始める。