竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「最初に見つけられて、良かったわ」
どこかで聞いた覚えのある声なのに、思い出せない。
(もうだめ。目の前が揺れて……立って……られない)
足がふらつき体のバランスが崩れ、そのまま前に倒れ込む。薄れゆく記憶の中で聞こえてきたのは、「兄さん、こっちよ」と呼びかける声だった。
次に目を覚ました時、私は見知らぬ場所に寝かされていた。見える場所は全部木ばかりで、どうやら森の中らしい。私は苔が生えている場所に寝かされていて、縛られてはいなかった。そのうえまわりには誰もおらず、ひとりポツンとその場に転がっている。
(でも、動けなーい!)
もしかしたらさっき嗅がされた薬のせい? 全身がしびれて、まったく起き上がれそうにない。それならばと、辺りを観察するけど見えるのは「木」と「苔」だけ。