竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「もうそろそろか?」
「早く結果が知りたいわね」


(結果? なんのことだろう? それにしてもあれから、どのくらい経ったのかな? まだ日は高くないから、そんなに時間が過ぎてはいないと思うんだけど……)


 二人の姿は見えるけど、まだ少し遠くにいる。ヒューゴくんは鎖で木につながれていて逃げられそうにない。そのうえ口枷もつけられてしまっていた。


(あの二人、誰かを待ってるみたいだけど、その間に逃げられないかな?)


 ありがたいことに、二人は私を放置している。こっそり足を動かしてみると、さっきよりは痺れが取れてきていた。指もなめらかとはいかないが、だいぶ動く。


(よし! このままこっそり森の中に隠れて、相手が油断したすきに、ヒューゴくんと一緒に逃げよう!)


 そう考えた時だった。私の目の前に、女性用の靴が飛び込んできた。誰かが私の顔の前に、立ちふさがっている。


「あら? 起きてるじゃない」


 その聞き覚えのある声に、ドキリと胸が跳ねた。おかしい。そんなはずはない。だってこの人は。


「ふふ。もうわかったんでしょう? 顔をあげたらいかが?」


 挑発的なその声に従い上を見上げると、そこにはアビゲイル様がいた。その顔は恐ろしいほどに美しく、そして醜悪な笑みを浮かべていた。
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