竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

31 暴かれる嘘と策略

 
「ア、アビゲイル様?」


 竜王様の妃に選ばれた彼女が、なぜここにいるのか? 聞きたいことが山ほどあるのに、驚きすぎて声が出ない。そんな呆けた私を、目の前の彼女は不機嫌そうな顔で見ていた。


「気安くわたくしの名を呼ばないでちょうだい。あなたのような得体のしれない平民に、話しかけられたくないの」


(こ、この人、本当にアビゲイル様? もしかしてずっと本性を隠してたの?)


 すると私を無視して、ギークとライラの兄妹がアビゲイル様のほうに走っていく。


「アビゲイル様! お妃様には選ばれたのですか?」
「もちろん選ばれたわ。そんなことより、王宮から連れ出せと言ってあったのに、なぜこんな王宮内の森の奥にいるのかしら?」


 アビゲイル様は吐き捨てるようにそう言うと、あからさまに見下した目で二人を見ていた。それなのに、この二人は慣れているのか、文句を言うそぶりもない。
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