竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「申し訳ございません! それが今日は特に警備が厳しくて、入った時はお父上のリプソン侯爵の護衛騎士として入れましたが、いざこの女を捕まえ王宮を出ようとしたところ、侯爵がいっこうに戻ってこなかったのです。ですからこの女を縛る縄すらもなくて……」

「お父様が? はあ、何をしているのかしら? まあ、いいわ。森の奥で人もめったに来ないから、見つかりはしないわね」


(侯爵もグル? 娘のために、自分の権力のために、ここまでするってこと?)


 ギークの報告に、さっきよりも機嫌が悪くなったようだ。しかしそんな苛立ったアビゲイル様に、今度は妹のライラがおずおずと話しかける。


「アビゲイル様。それで、いつ竜王様にお会いできますか? わたくしを竜王様の妾にしてくれると、お約束してくださいましたよね?」


 その言葉にアビゲイル様は、目を丸くしている。そしてすぐに、お腹をかかえ笑い始めた。


「あっはははは! これだから、田舎者は。勘違いも(はなは)だしいわ。竜王様があなたのような田舎娘、選ぶわけないでしょう? それどころかあなたは、この女を襲ったお尋ね者よ? 竜王様にお会いしたら、すぐに牢屋行きでしょうね」
「え……? ど、どういう意味ですか? だって、わたくしは、あなたが言ったとおりにしただけですのに!」


 ギークとライラは顔を見合わせ、真っ青になっている。それでも目の前で何が起こっているのかわからず、二人は必死にアビゲイル様に詰め寄り始めた。

< 343 / 394 >

この作品をシェア

pagetop