竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「あなたがこの世界にやってきてすぐに、水晶の守り人から報告が来たの。選定の儀で使う水晶が光ってる、私が竜王の卵を体に宿したはずだ、とね。もちろん私のお腹には入っていなかったわ。だからあなたのところに確認しに行ったの」
(あの最初の面会のことだ! その頃にはギークとライラに、嫌がらせをするように仕向けてたのよね……)
「あなた、必死にお腹を押さえて、アレ隠してたつもりだったのかしら?」
しゅうしゅうと興奮した荒い息が、ヒューゴくんの口から出始めた。体の鱗が浮き立ち、早く暴れさせろと言っているようだ。その様子を見たアビゲイル様は、にっこりと笑い「準備ができたわね」とつぶやいた。
「運命の花嫁から竜王の卵が出ていく、唯一の方法をあなたは知っているかしら?」
知らない。知りたくもない。それよりも逃げなくちゃ。
私はなんとか起き上がるけど、足が痺れでガクガクと震えている。
「運命の花嫁が死ねばいいのよ」
カチャリとヒューゴくんの口枷が外された。後ろ足を何回も蹴り上げ、一気に私に噛みつこうとしている。
「きゃあああ!」
体に痺れが残る人間の私と、竜狂いの葉でおかしくなったヒューゴくんでは、勝ち目がない。私は逃げる暇さえも与えられず、その場に倒された。