竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
シリルさんは私の名前の漢字を指差し「また他にも書いてもらわなくては」とつぶやいている。実験体のように私を見るのでちょっと怖いけど、嘘をついていると誤解されなくて良かった。でもこれではっきりしたのは、話す言葉は自動変換されてるけど、文字はされてないってこと。どうしてそうなるのかわからないけど、なぜ私がここにいるかと一緒で、理由なんてなさそうだ。
そんなことを考えていると、シリルさんが私の目の前に一冊の書物を差し出してきた。
「この文字を、リコさんは読めますか?」
置かれた書物を手に取ると、表紙には何か薄く文字が書いてあった。かなり古い本でインクが劣化してしまったのだろう。じっくり見なければ、そこに文字が書いてあるのかすらわからない。
「五百年前に現れた迷い人様が書かれた書物です。しかしこれは私たちには読めません。リコ様なら読めるかと思ってお持ちしたのですが……」