竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「わたくしは関係ありませんわ! それにあなたの花嫁はこのわたくしです! 竜の言葉が聞けるなど、この女の虚言でございます! こんな嘘を付く平民なんかのことより、わたくしのことを信じてくださいませ!」
しかし、彼女の願いは届かなかったようだ。グオオオという怒りに満ちた雄たけびが空に響いたあと、黒竜の口から白く透き通った光りの柱が、一直線にアビゲイル様に向かって落ちていく。
「ぎゃああああ!」
アビゲイル様の体はまるで感電したかのように震え、そのまま彼女はバタリと倒れてしまった。今はピクリとも動かない。
(もしかして、あれが竜気……?)
普段の私には竜気は見えない。それが今回は見えたのだから、そうとう強いものだったのではないだろうか。
「リコ! 無事か!」
「竜王様!」
気づくと私は人間の姿に戻った竜王様に抱きしめられていた。背中にまわった大きな手のひらが震えているのがわかる。私も抱きしめ返したいと思うのに、彼の体に包まれていて身動きができない。