竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
五百年前に現れたというお医者さんが書いた本か。もし同じ地球人ならわかるかもしれない。私が食い入るようにじっと見ていると、表紙の文字の正体がわかった。英語だ。ダイアリーと英語で書いてあって、中を開いてみるとやはり英語で何か書いてあった。
「……この文字が何かはわかります。でも私とは国が違いますので、全部は読めそうにないです。日記のようで、えっと、竜王との会話は面白いとか、お茶が甘くて美味しいとか書いてありますね」
英語は全く得意じゃなかったけど、日記だからか単語だけ拾っても、書いてあることが少しは読み取れた。私が書物の内容を伝えると、竜王はあからさまにガッカリした様子で「なんだ、日記か」と笑っている。何か新発見があるかと思っていたのかもしれない。
「前回初めて迷い人が来た時は、この国に疫病が流行していた。だからこそ医者であるその迷い人が来た時は、天が授けてくれたと大騒ぎになったようだが……。今はこの国はおろか周辺国も平和で問題は起きていない」
竜王は飲んでいたお茶のカップをテーブルに置くと、美しい顔でにっこりとほほ笑んだ。その嘘くさい笑顔に嫌な予感しかない。
「それで、おまえは何ができるんだ?」
私はその質問に飲んでいたお茶が器官に入り、ゲホゲホとせき込んだ。