竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
06 何も能力がない!
ゲホゲホとせき込みながら「おまえは何ができるんだ?」という、ど直球の質問に頭の中ですら何も答えられない。だって私は平凡な女性で何もない。私はリディアさんに背中をさすられながら、何か気づいてない特技がなかったか必死に捻り出そうとしていた。
(そうだわ! 私が読んだ漫画では、日本での料理や文化を持ち込んで重宝されてた! 私もそういうことかもしれない!)
なんとか落ち着いた私は、最後にコホンと咳払いをすると、神妙な面持ちで話し始めた。
「料理とかはどうでしょうか? こちらの世界には無いものを作れるかもしれません」
「ふむ。料理か。しかしこの国の料理は、先の迷い人がかなり改善したそうだぞ?」
「えっ! そうなのですか?」
「とりあえずこの菓子を食べてみろ。リコのいた世界と違うなら、改善の余地はあるな」
目の前にあるのはクッキーとパウンドケーキだ。試しに一口食べてみると、かなり美味しかった。お菓子ですらここまで洗練された味なのだから、料理も同じレベルだろう。