竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「それが竜王の卵が宿るのは、一度きりと言われています。ですから侯爵たちはリコさえいなくなれば、なんとでもなると思っていたのではないでしょうか?」
「え? じゃあ、私が死んでいたら、誰も運命の花嫁にはならないのですか?」
「はい。実際に例がないので本当かは定かではないのですが、結ばれる前に花嫁を失った竜王は衰弱して死に、国が滅びると伝えられているんです」
「国が滅びる?」
私の驚く様子に、リディアさんも少し苦笑ぎみに話を続ける。
「まあ、言い伝えのようなものでしたから、一人の女性の存在で国が滅びるとまでは信じていなかったと思います。それよりも突然現れたリコによって、権力が奪われることのほうが彼らには大ごとですから」
遠くからドタバタとこちらに向かって走ってくる音が聞こえてくる。リディアさんはその足音の主人が誰かわかっているのだろう。クスッと笑って空いている席に、新しいお茶を置いた。
「実はわたくしも、国が滅びるというのはおとぎ話のようなものだと思っていました。でも今ならわかります。竜王様にとって、たった半日でもリコの顔が見られないと、これですもの」
ニコッとほほ笑むリディアさんの背後のドアが、勢いよく開いた。