竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「竜王様の母にあたる、前の王妃様もそうでした。王妃様と結婚する前の竜王様は、それはそれは粗暴で気分屋、思いやりの欠片もない、強さだけを追い求める者だったのです。それが王妃と出会ったとたん、思いやりをもち民への支援を始めました。以前の王を知っている者からしたら、ものすごい変わりようで別人かと思うほどでしたよ」


(リュディカのお父さんは、お妃様の存在でそんなに変わったんだ……)


「竜王様の隣に立つ女性は、心が強くあらねばなりません。私は常々、淋しい思いをした彼を支えてくれる女性が必要だと思っておりました。だからあなたがこの世界に現れたことが、奇跡のように思えます」


 ルシアンさんはまるで、リュディカの父親のような笑顔で私を見ている。彼の隣に私がいることで、安心してくれたのだろうか。そうであるならば、とても嬉しい。


「さ、儀式を始めましょう。まあ、あなたにとっては儀式よりもバルコニーの挨拶のほうが大変だと思いますが」
「うう! なるべく考えないようにしていたのに! ひどいです!」


 そう、儀式はほとんど聞いているだけで、誓いの言葉もない。だけど、その後の王宮のバルコニーでの挨拶がものすごく恥ずかしいのだ! だって大勢のお祝いに集まった人たちの前でキスしないといけない。そのうえ国民が入れ替わるたびに、何回もする……。
< 379 / 394 >

この作品をシェア

pagetop