竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


 パリ……パリ……パリ……


 少しずつ卵に大きなヒビが入り、一枚目の欠片がクッションに落ちる。そしてその割れた隙間から翼らしきものが、ピョンと弾けるように飛び出てきた。


「か、かわいいぃ……!」


 そのまま少しずつ出てくるのだろうと思っていると、いきなりバリバリバリと爆発するように卵が割れ、目の前に小さな黒い竜が現れた。


「……っ!」


 誰もが話すのを忘れ、静かに見守っている。


 赤ちゃん竜はくわ〜っと大きな欠伸をして、まだ目が閉じている。キョロキョロと首を振ったあと、目が開いていなことに気づいたようだ。コシコシと目を擦り、目を開けようと頑張っている。


 そして時々バランスを崩して後ろにコロンと転がったりしながら、ようやく大きな瞳がパッチリと開き、私と目が合った。


『ママ! やっとあえた!』


 ポロポロと大粒の涙が次から次にあふれ出し、息子の顔すら滲んで見えない。私も本当にあなたに会いたかった。あなたがいなければ、私は幸せになれなかった。


「ママも会いたかったよ!」


 その言葉に息子は小さな翼をバッと開き、パタパタと羽ばたかせている。すると私の肩を抱いているリュディカにも気づいたようだ。
< 385 / 394 >

この作品をシェア

pagetop