竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
都会育ちで農業の知識もない。聖女の力のような特別な力も無さそうだ。それに竜王の体液で傷を癒やせるなら、能力がかぶってるから必要ないだろうし。他には、何か他にはないの? お裁縫は……こんな素敵なドレスがある世界で、雑巾しか縫えない私がなんの役に立つっていうのよ……!
「おい、大丈夫か?」
私が下を向きうめき声を上げ始めたので、竜王は心配になったようだ。気づけば両手で頭を抱えていて、傍から見たら危ない人に見えただろう。ドレス姿ならなおさらだ。そんな醜態をさらしながら必死に考えたけど、これ以上私に特別な能力が出てくる気配はなかった。
(よし! あきらめよう! そしてあきらめてもらおう!)
意を決した私が顔を上げると、竜王は面白い生き物を見る目で私を見ていた。
「やはり、この国を良くする能力はなさそうか?」
「……はい。本当に申し訳ございません!」