竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「えっと、次は青竜で……」
「竜王様! まだ仕事は残ってるんですよ!」
シリルさんの大声が頭上から聞こえ、何事かと振り向くと、そこにはリュディカが立っていた。すぐさま私に抱きつき、なにやら充電中らしい。
「はあ……リコが足りない」
「またサボってるの? ダメよ、シリルさん困らせちゃ」
リュディカのサラサラした髪の毛をなでながら窘めると、本人はフンと鼻を鳴らして抗議する。
「大丈夫だ。ちょうど休憩を取ったところだからな。俺の休憩は、リコをさわらないと終わらないんだ」
「まったく……」
それでも私の首に顔を埋め、スリスリと甘える姿に、頬が熱くなる。すると私のエプロンのポケットがモゾモゾ動き、なにやら文句を言い始めた。
『パパ! パパは国王なんでしょ? ダメだよママは仕事なんだから邪魔しちゃ』
「チッ、ここにいたのか」
二人はバチバチと睨み合い、口喧嘩を始める。いつものことだ。
「おまえはもうすぐ、兄になるんだぞ。そろそろ母離れしたらどうだ?」
『パパこそ、仕事が残ってるんでしょ? 妻離れしたらどう? それにここは僕が通ってる保育園だよ』
トレジャーは私の血が混じっているからか、言葉の発達がとても早く、もう大人顔負けの語彙力で実の父を言い負かそうとしている。