竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「そもそも迷い人様がどうやってこの国に現れるのかがわからないので、帰り方を探る方法すらないのです。その当時も研究はされたようですが、迷い人様はいきなり空中から現れるものですから、手がかりすらなくて……」
「そう、ですよね……」


(本当に私はなんのために、この世界に飛ばされたんだろう……)


 別に日本でだって大きなことを成し遂げていたわけじゃないけど、今みたいにたった一日で憎まれるような状況じゃなかった。前の迷い人さんのようにこの国を良くする能力があるわけでもなく、平凡な私がここに居てなんの意味があるの?


(はあ……でも帰れないのなら、せめて平穏に暮らせるようにしなくちゃね……)


 だいたいこの国の人は悪くないもの。何か術で呼び寄せたわけでもないし(むしろ不審者扱いだった)、勝手に私が飛び込んできただけ。あの場で斬り殺されずに、こうして丁重に扱われているだけ幸運だわ。


(そうよ! 日本に帰れないってわかったのなら、もう働くしかないじゃない!)
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