竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「突然全く知らない世界に飛ばされたんです。それも女性の身で。帰れるなら帰りたいに決まっています」
「それはそうだが、ここに居て楽しく暮せばいいじゃないか……」
竜王の表情は、まるで家に遊びに来た友人が帰ってしまうのを引き止めるような顔だ。すねているようなその表情に、落ち込んでいた心がほんの少し和らいだ。
(でも竜王の考えている、楽しく暮らすを受け入れたら駄目よね)
それにこのまま自分の意見を言わなかったら、知らない間に竜王の言う通りにされてしまいそうだ。私は二人が「また子供みたいなこと言って」「うるさいぞ」と言い争うなか、勇気を出して話しかけた。
「あの、私きっとこれからもこの国に恩恵を与えられる能力は、見つからないと思うんです。それなら私、ちゃんと働いて暮らしたいと思います。王宮でお客様としてではなく、普通に仕事をして暮らしていくことはできますか?」
するとその言葉に竜王は、あからさまに不満げな顔をし始めた。