竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「私の部屋の隣はどうでしょうか? 侍女部屋ですが今より奥にあって防犯面でも安心ですし、キッチンも付いています。それにリコの侍女じゃなくなったとしても、同僚として教えてあげられる距離にいたいです」
「リ、リディアさん!」


 なんて優しいんだろう。ここに来て悪意どころか殺意めいた感情しか向けられてこなかったから、余計に彼女の優しさが心に染み渡る。私が「こちらこそよろしくお願いします!」と言ってリディアさんの手をぎゅっと握ると、彼女は頬を染め嬉しそうにほほ笑んだ。


「おい、俺抜きで話を進めるな」


 仲間はずれみたいな気持ちになったのだろう。竜王はふてくされた顔で、私たちの間に割って入ってきた。本当に外見とは違い、子供みたいな人だ。それでもこの態度はいつものことらしく、シリルさん達は微笑ましいものを見る目で笑っている。するとシリルさんが何か思い出したかのように小さく声をあげ、私のほうを振り返った。

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