竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
02 竜王のいる異世界
「きゃあっ!」
ドスンという音とともに、私の体が床に転がった。バランスを崩して倒れたからか、頭を強く打ち、目の前がクラクラする。周囲からはたくさんの女性の叫び声や、男性の怒鳴り声が響いていて騒がしい。
「何者だ! 衛兵! 今すぐこの者を捕らえよ!」
(あれ? なにこれ? 私、普通に歩いてただけなのに、転んじゃったの? それにさっきまで人通りが少なかったのに、たくさん人がいるみたい)
「痛たたた……」
「動くな!」
痛む頭に手を当て起き上がろうとした瞬間、突然後ろから背中を突き飛ばされ、抑え込まれる。いつの間にか私の周りを取り囲むように人が立っていて、目の前にはギラリと光る剣の切っ先が見えた。少しでも動けば瞬時に切られるだろう距離にある剣に、思わず喉がひゅっと鳴った。