竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

07 竜王のもう一つの姿

 
「きゃあああ! シリルさん! 竜王様が! お、落ち……」


 あわててバルコニーの手すりに駆け寄り、下を確認するも誰もいない。さっきまでここにいた竜王様の姿は影も形もなくなってしまった。終いにはさっきまで晴れていた空がどんよりと曇ってきて、地鳴りのような音まで辺りに響き始めている。


(竜王様、どこに行ったの? 下にもいないけど……)


 キョロキョロと見回すもどこにもいない。その間にもビリビリと空気を震わす振動が、手すりから伝わってきた。


「りゅ、竜王様……?」


 急激に変化した周りの雰囲気に、もう怖くて泣きそうだ。心もとない気持ちで竜王様を呼ぶけど返事はなく、否が応でも不安をかき立てられた。そんな時だった。
< 50 / 394 >

この作品をシェア

pagetop