竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
慣れた仕事とはいえ、一人でするのは心細かったのだ。それにしてもリディアさんは侍女なんだから、もともとは誰かのお世話をしていたんじゃないのかな? その人のところに戻らなくてもいいのだろうか?
そんなことを考えながら食器を片付けていると、お皿の横にキラリと光るものを見つけた。
「ん? ネックレス……?」
白い石がついているネックレスだ。革紐で作られたもので、使い込んである。きっと忘れ物だろう。リディアさんがちょうどキッチンのほうに行ってしまったので、私はそのネックレスを手に、ご主人に話しかけようとした、その時だった。
「おい、おまえ! また無断で入ってきたのか! ここは騎士団の寮内だぞ!」
突然の怒鳴り声にぴょんと体が跳ねた。その聞き覚えのある声に一瞬で心臓がバクバクと動き出し、逃げたいのに体がすくんで動けない。
(この声! もしかして……)
恐る恐る振り返ると、そこには私をにらみつける騎士が一人。私を憎々しげに指差し近づいてくるその人は、昨日私を捕縛し、髪の毛を引っ張った男だった。