竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
心臓の音が耳の奥でドクドクと響いている。それでもなんとか説明することができた。リディアさんはまだ戻ってきそうにない。さっき大量のお皿を持って行ったから、手間取っているのだろう。私はゴクリと喉を鳴らし、また男に話しかけた。
「で、ですから、手を離してもらえませんか?」
(私は仕事をしていただけで、悪いことしてないもの。ちゃんと説明もしたし、これでわかってくれるはず……!)
それなのに男は私の手をいっこうに離そうとしなかった。それどころか、さらに力を強め、すごい形相で私を見ている。
「……おい。おまえ、これはどういうつもりだ」
「え? い、痛い!」
握りつぶされるのではないかと思うくらい強く手を握られ、持っていたネックレスが床に落ちた。カシャンという落下音で、私たちの視線が下に向く。さっきテーブルで見つけた白い石のネックレスが、二人の間に落ちているのが見えた。