竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
実際にどこかに連れて行こうとするわけでもない。ただ私が痛がっているのを見て、ニヤニヤ笑っているだけ。きっとこの人だって私が盗んだとは思っていないのよ。言いがかりをつけてウサを晴らすのが目的なんだ。
「はなし……て!」
自分の腕をつかみありったけの力をこめて、引っ張った時だった。
「おい、ギーク! 何をしてるんだ! その人は昨日現れた、迷い人様じゃないのか?」
男の後ろから突然現れた別の騎士が、私たちの間に割って入ってきてくれた。そのおかげで握られていた手から逃れることができ、私はあわてて男たちから離れた。
「おまえ、竜王様に手荒な真似をするなと言われただろう! 怪我でもさせたらどうするんだ!」