竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「せっかくだから、あの甘いお茶、飲もうかな……」
お茶の葉が入ったティーポットにコポコポとお湯を入れると、甘い香りの湯気が立ち上がり、なんだか心が落ち着いてくる。一口飲むとお茶の温かさと、優しい風味が口いっぱいに広がり、私はほうっと息を吐いた。
(本当にこのお茶、美味しい。一日頑張った時のご褒美として飲もうかな)
昨日からのドタバタした時間が嘘のように、今は静かに過ごしている。外も風が吹いてないようで、しんと静まり返っていた。聞こえてくるのは、お茶に吹きかける自分の息づかいだけ。
するとどこからか、コツコツと何かを叩く音が聞こえてきた。
「……え?」
(リディアさんかな? でも音がしたの扉じゃなかった気がする……)
それでも急いで扉に向かって「リディアさんですか?」と言うも、返事はない。それにリディアさんだったら自分から名前を名乗ったうえで、ノックしてきそうだ。
――コンコン
「……っ!」
やっぱり聞こえた。何かをノックする音。そしてその音は、私の背中側にある「窓」から聞こえてきた。