竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
10 夜の訪問者
――コンコン
再びノックする音が部屋に響き、私は意を決して、音がしたほうに近づいていく。窓には分厚いカーテンがかかっていて、ほんの少しだけ隙間があった。しかしそこからは外の暗闇しか見えず、風の音すら聞こえてこない。
(もしかして、私の聞き間違い? それか小枝がぶつかったとか?)
窓の外の景色をはっきり覚えていないけど、この部屋は三階だ。そこまで大きな木が近くに生えていたような記憶はなく、私は恐る恐るカーテンに手をかけた。その時だった。
『リコ、俺だ』
突然自分の名前を呼ばれ、ビクリと肩が震えた。それに聞き覚えのあるこの声は――
「竜王様?」