竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
『リコがいた世界のことは、先の迷い人の残した文献を読んだから、だいたいわかっている』
「えっ? そうなのですか? 以前の迷い人さんは、私と同時代の方なんでしょうか?」
てっきり五百年前のこの世界に来たから、その人も古い時代の人だと思っていた。でもよく考えれば五百年も昔の人だと、日本だと武将とかがいる時代よね。海外でもそのくらいだと、まだ病気の知識は現代ほどじゃないと思うし……。
『むむ。たしかに時代が違う場合もあるか。そうだな。たしか今日読んだものでは……遠くにいても話せる小型の道具があって、その中にたくさんの知識が入ってると書いてあったが。どうだ? リコも知ってるか?』
「そ、それって! もしかして、スマホでしょうか?」
『名前は知らん』
子供の竜の姿をした竜王様は、「そこまでは覚えられん」と言って、小首をかしげている。漫画だったら鼻血を出してしまいそうなほど、かわいい。
(それにしても、今言ったのは絶対スマホよね。じゃあ五百年前の迷い人さんは、私とさほど変わらない時代から飛ばされたってことなのか……)