竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
私が怪訝な表情をしたからだろうか。竜王様はクッションから飛び立つと、私の顔の前で止まった。小刻みに翼を動かしながら、ふよふよと浮いている。その姿はとてもかわいかったけど、私を見つめる黄金の瞳があまりにも真剣で、にやける気持ちにはなれなかった。
『それで、リコはなんでそんなに、元いた世界に未練がないんだ?』
「え……」
いきなり核心をついた質問に、頭が真っ白になった。何か話そうにも、言葉が思い浮かばない。
『普通、まったく違う世界に一人で飛ばされたら、毎日泣いて暮らすことだろう。しかもあんな乱暴なことをされて捕まったのに、すぐに働いて頑張って生きていこうなんて切り替えが早すぎないか?』
「そ、それは……」
その理由は自分でもわかってる。でも話すとなんだか、みじめな気持ちになるから話したくない。すると黙ってうつむく私の頭を、竜王様がパシパシと翼で叩いた。まるで下敷きで叩かれたような感触に、思わず顔を上げてしまう。