竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「私、元いた世界では、孤児だったんです」


 竜王様の体がピクリと動いた。


「幼い頃に両親が亡くなって、施設に入ってました。母の親戚に引き取られたのですが、うまくいかなくて。その後も住む場所が何回も変わったんです」


 竜王様は前を真っすぐ見て黙って聞いていたが、急に私のほうを振り返り、ぼそりと呟いた。


『その家族に暴力をふるわれたのか?』

「いいえ! そんなことはなかったのですが、ただ、私のことを邪魔だと思っているのはわかりました。だからせめて役に立たなきゃと思って、家事を全部やってたんです」


 結局は(こび)を売っていたようなものだ。感謝の気持ちからというより、気に入ってもらいたくて料理や掃除を引き受けていた。今と同じ。私は善良な人間ですとアピールするために、雑用をこなしていた。

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