散りゆく桜に願い事   うちのおらん世界で
恋に落ちてあっという間に秋を迎えようとしてた。

うちはなんのアクションも起こせないまま毎日飽きずに眺めているだけやった。

今日は1日中雨やった。

おかげで野球部は中練。

筋トレと階段ダッシュのメニュー。

もちろんうちがあいつを見れることはない。

たったそれだけやのに1日中体が重かった。

いつもの場所で誰もいないくらいグランドを眺める。

大きめのため息を1つこぼした後、読みかけの本を閉じた。

それと同時に図書室の古いドアが勢いよく開く。

“すんません!読みやすい本って何すか!?”

聞き覚えのある声に心臓がきゅってなった。

“荒木君、図書室では静かにね?”

穏やかに諭す司書さんはこの学校の教員で1番若く、綺麗で人気な先生だ。

男子はもちろん、誰にでも平等に優しいため女子にも人気がある。

司書さんはあいつと少し話したあと、本を探しに行った。

あいつは手持ち無沙汰になり図書室に初めて入ったかのようにキョロキョロ見渡す。

そんなあいつと目があった。

いつもひたむきに野球に打ち込んできたあいつの目に初めてうちが映った。

うちはたまらなく恥ずかしなって不自然に目を反らした。

さっさと本を片し、リュックを背負った。

図書室から出る前に司書さんに挨拶して靴を履いた。

図書室から出ても顔の熱は冷めなかった。
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