婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
「……すみませんでした」
「クロエ、お父さんのお膝に座って、読んでもらいなさい」
「わ〜い! 抱っこ!」
私はすぐさまクロエを抱き上げエドの膝に座らせ、目の前に絵本を置いて広げる。クロエはワクワクした顔でエドを見上げ「よんで〜」とねだり始めた。よし! これで逃げられない。エドは子供たちの自分を見上げる顔に特に弱い。
「わ〜……そういう手できたか」
「なにか言った?」
「いいえ、なにも」
最近はまわりにエドはサラの尻に敷かれているなんて言われるけどしょうがない。母は強しなんだ。ずぶとくなったわけじゃない。たぶん。
クリスが「僕も!」とせがむので私もクリスを抱き上げ膝に乗せエドの隣に座る。そうして例の絵本の読み聞かせはエドのため息と共に始まったのだった。