婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
全然違う。お茶をしてエドとイチャイチャしてたら、勝手にさらわれただけだ。このあたりから絵本はどんどんおかしくなっていく。
「フィリップはドラゴンの剣を持ち、悪い王子に飛びかかります。ローズは薔薇の杖で魔法を使いました」
え……? ドラゴンの剣? 薔薇の杖? なんのこと? 思わずエドを見るとエドもこっちを見て首を傾げている。絵本をのぞきこむとたしかにフィリップが剣を、ローズが先端に薔薇がついた杖を持っている。次のページをめくるとローズは杖から稲妻みたいな攻撃の光を出していた。フィリップの剣はドラゴンを召喚している。
「ふ、2人は、ち、力をあわせて……悪者と戦います……ふっふふ」
もうエド、笑っちゃってるじゃない。私はあまりの捏造に呆れて口をあんぐりと開けていた。
「とうとうローズとフィリップは悪い王子をたおし、この国は平和になったのです」
幼児向け用の絵本なので文字が少なかったが、それでもこれだけ違うとは。前世に関する本を見ないようにしているうちにかなり事実を捻じ曲げられていた。悪い王子と戦って勝ったという大筋だけが残っている。