婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
「聖女ローズと英雄フィリップの魂は、ずっとこの国を見守っていくことでしょう。めでたしめでたし」
そう言ってエドが絵本をパタリと閉じると、双子はそれぞれ膝から降りドタバタとキッチンに入っていく。なにごとかと見守っているとクロエは泡立て器をクリスはフライ返しを持ってきた。そしておのおのキッチン道具を天井に向けてかかげ、キラキラした目でこっちを見ている。
「わたし薔薇の杖がほし〜い」
「ぼくも! ぼくもドラゴンの剣ほしい!」
そのポーズはさっき見た絵本の真似なのね……。 もう変な興味持っちゃって。私とエドはあまりの可愛さにクスクス笑いながら答える。
「絵本のお話だから剣や杖はどこにも無いでしょう? こればっかりはねぇ……」
むしろ早く忘れてほしいと思っていると、双子は首をかしげキョトンとした顔でこう言った。
「「売ってるよ!」」
う、売ってる!? 2人の発言に思わずガタッと椅子から立ち上がってしまう。
「はあ!? 売ってる? どこで?」
「お祭りのお店にたくさん杖あるよ?」
「ドラゴンの剣もいっぱいあった!」
「「ねえ、買って〜」」
双子がじりじりと近づいてきて私にガシっと抱きついてくる。返答に困っていると外からよく知ってる声が聞こえてきた。