婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
タペストリーの四隅には薔薇と剣が重なった刺繍がされている。それだけ見れば上品で素敵なタペストリーだ。しかし真ん中に堂々と「ローズ&フィリップよ 永遠に……」「フィリップ王子の気高き誠心を讃えよ」「ローズ その崇高な魂は美しく咲き誇る」と刺繍されているではないか!
「ひえっ! なに? このポエムタペストリー! 誰が買うの?」
「俺が買ってきたんだけど」
「そうだった」
突然こんなものが出されたので驚きのあまり、父が買ってきたことすら忘れてしまう。父はなにをそんなに驚くんだとばかりに不思議そうに私を見ていた。
「これも最近の流行りらしい。店の中に飾ったらどうだ? うちも祭りを盛り上げないとな」
「そ、それはそうだけど……」
毎年苺祭りはお店と双子の世話で忙しくて、出店でなにを売られているか知らなかった。まさかこんな事になってるとは。そういえば数年前からお祭りで苺のネックレスや靴が飛ぶように売れるとは聞いていたけど、商魂たくましいとはこのことね。
「それにこれは王家公認の品だからな」
「え? これ王家公認なの?」
「そうだぞ」
「サラちゃん、そこにある絵本もそうだよ」
お義父さんに言われてあわてて絵本の裏表紙を見てみると、たしかに大きく王家の紋章が入っている。そしてもう一つ王家の横に貴族の紋章があり、それには見覚えがあった。