婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される


「えっ? あ、あの私は……」
「この街の人だよね? 案内を――」



 そこまで言ったとたん男の人は後ろにぐいっと引っ張られる。エドがその人の襟を掴んで引っ張り上げているのが見えた。


「俺の妻になんの用?」
「エド!」


 声の感じから怒っていると思いきや顔は笑顔だ。いや、口元は笑っているけど目はものすごく冷ややかで、それがエドの美形に凄みを感じさせ周りで見ていた人も「おお……」と呟いている。目の前の男の人も圧倒的な美の迫力に「うわ! 凄い! ごめんなさい!」と謝り、あっという間に人混みに消えていった。



「まったく! 危ないところだった!」
「スリじゃないから、危なくはないけど。でもありがとう」
「そういう危ないじゃないけど……まあ、いいや! 日も落ちそうだから帰るよ」



 はあ〜とため息をついたエドは私の手を握って足早に歩いていく。ぐんぐん歩いていくのであっという間に私達のカフェが見えてきた。そのまま店には入らず、エドは私を中庭に連れて行く。



「中庭に何かあるの?」
「渡したいものがあるんだ。ここに座って」



 中庭にはよく家族でお茶をするテーブルセットが置いてあり、その周りは満開の薔薇が美しく咲いていた。エドは私をそこに座らせテーブルに小さな箱をコトリと置いた。


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