婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される


 今までもそうだ。時折この幸せな時間が突然終わってしまうんじゃないか? という不安が襲ってきていた。仲直りできると思ったのに、もう一度逢えたのに死んでしまった過去。今が幸せであればあるだけ残酷に幸せが奪われる恐怖があった。



 でもそれももう終わりにしよう。私はエドの横顔をそっと覗き見る。エドはもうあれから悪夢を見ない。私も過去を受け止め恥ずかしがることはやめた。そっと指輪をなでるとエドの覚悟が伝わってくるようだった。



 過去からつながっている私達の人生はこれからも続いていき、明日もきっと素敵な日になるだろう。ううん、明日も明後日もその次も。たとえ私達がまた生まれ変わっても、幸せになることをあきらめなければ叶うと信じたい。


「おかあさーん! こっち来て!」
「おとうさーん! 見ててね!」


 子供たちがぴょんぴょん跳ねながら私達を呼んでいる。後ろでは両親達が笑顔で私達を見ていた。私とエドもお互いを見てにっこりと微笑んだ。


「今いくわ!」
「ちゃんと見てるよ!」



 私達は手をつないで家族のもとに走り寄る。あちらこちらで準備されている苺の香りが風に運ばれてきて、私達の鼻をくすぐる。私達家族は甘い幸せの香りに包まれ笑い合っていた。
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