婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
「あの、エドワード様。ここはいったい?」
「サラ、昔みたいにエドと呼んでほしい」
「え!?」


 私にとってはつい最近の事だけど、30年も経っていたらもう御結婚されて即位されていることだろう。こんな状況とはいえ、伯爵令嬢の私が馴れ馴れしい態度を取って良い相手ではない。なによりエドワード様の特別だと勘違いして傷ついた事を思い出すと、とても愛称で呼ぶ気にはなれない。


「でも、死んだ身ですがエドワード様にはソフィア様がいらっしゃるのですから、ケジメはつけた方が良いと思います」
「え? ソフィア? 誰のこと?」
「マリス王国のソフィア様です! 婚約破棄したいとエドワード様が私に告げた時、隣にソフィア様がいて……」


 あら? そういえば紹介されただけで、次の婚約者だとは言ってなかったような……?
 いえ! でもあの状況はいかにもです!


「ああ! ソフィア王妃のことか!」

 ソフィア王妃!
 もうわかっていた事なのに、やっぱり2人が御結婚された事を知るとグサリと胸に突き刺さる。しょうがないわよね。エドワード様にとって結婚したのが30年前の事でも、私にとっては今知った事なんだから。


「そ、そうです! お2人が御結婚されているのですから、私は元婚約者とはいえ馴れ馴れしくするわけにはいきません! いえ元婚約者だからこそ適切な距離でお話しなくては。私は生きてはいませんが、大事な事です」


 なんだか変に早口になってしまったけど、きっぱり言えて良かった。死んだ後でまで勘違いして傷つくのは遠慮したいもの。ホッと一息つくと、なぜかエドワード様はニコニコしてこちらを見ている。


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