婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
「それに先にお茶をしていたのは、打ち合わせをしていたからなんだ」
「打ち合わせ?」
「その、君に婚約破棄とライバル登場をちらつかせて妃教育に力を入れてもらうために、演技の打ち合わせをしていたんだよ」
「そういえばあの後、どうするつもりだったのですか?」
「あの後は僕と婚約破棄をしたくなかったら、毎日妃教育を受けることと成果が出るまでは魔術禁止ということにするつもりだった」


 それは辛いし頑張りそうな条件だわ。つくづく最後まで我慢して聞いていたらと思うと悔しいけど、私の性格ならやっぱりあの場から逃げていただろうな。


「自惚れていて恥ずかしいよ」
「え?」
「僕と結婚したかったら魔術もせずに頑張れだなんて、自惚れもいいところだよ。サラが怒って逃げるのも無理ない」
「ち、ちが」


 そんな事はないと否定しようとしたその時、コンコンと扉がノックされ「エドワード様、お食事です」と声が聞こえてきた。


「ああ、もうそんな時間か」


 そう言ってエドワード様が壁の小さな扉を開け、食事を取ってくる。トレーの中身を見たエドワード様はなんだか嬉しそう。お腹空いていたのかしら?ちょっと可愛い。


「サラ! 君の好きな苺があるよ!」


 満面の笑みで教えてくれるエドワード様は、どうやら私の大好物を見たから喜んだみたい。食べれないと思うのだけど、私が喜ぶと思って嬉しそうにする姿に胸の奥が熱くなる。

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