婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
「もう! エドワード様ったら。私は食べられないですよ?」
そう言ってクスクスと笑うと、エドワード様は「そうだった」とガッカリしている。それでも私が笑っているせいか、すぐに照れて笑っている。可愛い。
そっとトレーを覗くとエドワード様が手にしている食事は、貴族が食べるのと同じレベルだった。質素な物を食べさせられているわけじゃなくて安心する。
たっぷりの鹿肉のシチューに焼きたてパン、サラダも新鮮で美味しそう。小さなお魚にはソースが円を描くようにかかっていて丁寧に作られていた。
「デザートも豪華で良いですね! 今日は私を呼び出すのに魔力もいっぱい使ったのですから、たくさん食べてくださいね」
「ふふ、そうだね。今日の食事はすごく楽しい」
デザートのお皿を見ると生クリームがとろりとかかったスポンジに、いろんな種類のフルーツがトッピングされていた。なるほど、ここに苺も入っていたから喜んだのね。こんな小さな欠片の苺を見つけて喜ぶエドワード様に、何もしてあげられないのがつらい。気づくとどんどん暗い方向に考えてしまう。ダメダメ! 悲しんでいるより笑顔でいる方がいい! 気を取り直してもう一つのお皿を見ると、クッキーなどの焼き菓子が入っていた。
「あ! クッキー!」
「ん? どうしたの?」
クッキーを見て思わず声を上げる。ソフィア様との事が誤解だったなら、あの時のクッキー食べてほしかったな。