婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される

「実はあの日仲直りのために、クッキーを焼いていたんです。あまり美味しくできなかったけど、謝りたくて作ったので食べてほしかったです」
「ああ! あれは僕が魔術で保存して、10年かけて食べたよ! 美味しかった!」


 てっきりエドワード様もクッキーの事は知らずに家のものが処理したと思っていたので、予想外の言葉が返ってきて驚く。


「え!ちょっとそれは……」
「あ、引かないでほしい」


 戸惑う私に焦ったエドワード様は、手にしていたパンを置いて説明する。


「あの時サラの家の人から聞いたんだ。僕に食べさせるためにクッキーを焼いたって。本当にごめん。あんな状況じゃ出すこともできなかったよね」
「いいんです。その、あの時エドワード様達のテーブルにすごく綺麗なケーキがいっぱいで、恥ずかしくなって」
「あれは仲直りした後に2人で食べるように用意したものだったんだ。奥ではまだまだケーキが用意してあって」


 そうだったんだ。今思い出してみれば、あそこにあったケーキは私の好物の苺を使ったものばかりだった気がする。


「今から考えたらあんな事言って、仲直りできると思っていたのが不思議なくらいだけど。15歳の僕は自惚れ屋で恥ずかしいよ」


 淋しそうに言うエドワード様を見て、さっきの誤解をとかなきゃとブンブンと頭をふって否定する。

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