婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
エドが私に見える様に手紙を開き、読んでいく。私は父の字を見ただけで、涙が出てきそうだ。魂なのに涙が出るのは本当に不思議だけど。
「サラへ。本当にお前は大馬鹿だ」
出そうな涙が引っ込むのを感じる。読んでいるエドも気まずそうに宛名を確かめ「これはオルレアン伯爵の筆跡で間違いない?」と聞いてくる始末だ。悔しいが癖のあるお父様の字なので、頷くしかない。
「サラは昔から短気で後先考えず行動するから気をつけろと言っていたのに、話を聞かないお前には本当に怒っている。まさか死んでしまうなんて、ここまで大馬鹿とは思わなかった」
本当にそのとおりなので、返す言葉も無い。
「それでも私やお前の母は大馬鹿なサラが恋しくてしかたがない。会いたくて仕方がない。馬鹿なお前を愛しているのだから、私達両親も大馬鹿なのだろう」
私のお父様は嘘を言う人ではない。だから私のことを大馬鹿だと怒っているのも本当で、それ以上に私を愛しているのも本当なんだと思い知らされる。
「今これを読んでいるという事はお前を傷つけた憎きエドワードが、お前の魂を呼び戻してくれたのだろう。何も伝えられず死んでしまったお前に、言葉を伝える機会をくれた事に感謝する」
エドの肩がほんの少し揺れる。手を添えてあげる事ができたなら、どんなにいいだろうか。