婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
エドは今までの失敗を思い出すように、クスクスと笑いながら話している。時折頭を押さえているのは、頭痛がしているからかもしれない。
「あんな大掛かりな魔術を、20回もしたなんて」
1年に1回とはいえ、魔力を一気に使う魔術は体に負担がかかる。魔力の巡りが悪くなり病気になる人や、最悪死んでしまう人だっているのだ。それなのにエドは私のために何回もあの魔術をして、体を酷使していたなんて。
「そんな顔しないで。君のためだけじゃない。一番は僕自身のためにしてたんだよ? 僕の生きがいは君ともう一度会う事だったんだから」
弱々しく笑いかける顔は、さっきより青ざめて唇が乾いている。エドの急激な体調の変化に自分が魔力枯渇で急死した時を思い出し、触れられない私にはどうもできない事を悟った。
「だから今日君が現れた時、本当に嬉しかったな」
「エド、もう話しちゃだめ。もっと悪くなるよ」
「もういいんだ。君と会えて謝ることもできた。許してくれて、キスまでできた」
「キスしてないよ。あんなのキスじゃない。だからまだ死なないで。もう私に魔力を流さないで」
「ひどいな……キスだよ」