婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
たぶんもう私に魔力を流さなくても、エドの体の中は魔力がうまく巡らずボロボロなんだろう。私もパニックになっていて、自分が何を言っているのかわからなくなってしまった。
「サラ……愛してるよ……」
「エド!」
エドの周りがキラキラと光り始める。待って! 私まだ伝えてない!
「エド! 私も愛してる!」
エドがゆっくりと目を閉じて、ふわりと部屋中に広がるように体が光った。その光はまた1つになり天井を抜け、空に向かっていく。
私は眠っている様なエドの顔に近づき、唇を重ねる。
トン、と私の唇とエドの唇が初めて触れ合った。
ああ、もうすり抜けなくなったのね。
初めて触れ合った本当のキスなのに、胸が痛い。驚いて起きてくれればいいのに。
気づくと私の手もキラキラと金色の粒に変わり始め、形が無くなっていく。私もエドと同じところにいけるかな?
私はエドの体にそっと寄り添い、自分の体が消えるのに身を任せていた。
どのくらい経ったのだろう? 前と違って今度は明るくてキラキラしてるし、あの部屋でもないしエドもいない。でも同じ様に眠たいな。今度はなんだかポカポカしたお日様の下で眠っているみたいで気持ちが良い。
エドが頑張ってくれたから、私には次の人生があるのかもしれない。エドが言うように魂がくっついて、同じ時代に生まれるかもしれない。
エドには幸せになってほしいし、できるなら幸せにしてあげたかった。でも私じゃなくてもいい。あなたが幸せになれるなら。
私はゆっくり瞼を閉じた。