婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
次に「私」が気づいた時には、ある人がキラキラした目でこちらを見ている瞬間だった。
「サラ! やっと会えた!」
その人の瞳を見たとたん、私の中に彼との思い出が全部蘇った。それこそ辛い思い出もすべて。今まで忘れていた事が信じられないくらいだ。
あの日私を魔石の中から救い出し、初めてのキスをしたあの人だ。でも今回は気づかないふりをしなくては。彼には私よりもっと素敵な人と幸せになるべきだし、私は彼を幸せにできそうにない。最初に彼に気づいた時は突然の事で目を見開いてしまったけど、なんとかごまかさなければ。
「申し訳ございません! キース国の王子の歓迎パーティーに来ていて、迷ってしまって。すぐ立ち去ります!」
ペコリと謝罪をし慌ててパーティー会場に戻ろうとするが、パシっと手を掴まれて動けない。
「サラ、無理だよ」
彼も私を見て、全て思い出したのだろう。ごまかしても無理なのがわかるので、正直にならざるをえない。
「出会いが突然すぎて、ごまかせないじゃない!」
はあ~と大きくため息をつきながら小声で言うと、彼はふふんと得意げに笑っていた。
エドことエドワード王子は先日25歳になったばかりのこの国の第3王子に、サラだった私は今年10歳になった伯爵令嬢として再び出会ってしまったのだ。