婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
そのまま手を引かれ、どこかに連れて行かれそうになる。や、やだ! 怖い! なんなのこの子! 誰か助けて! そう思った瞬間、私と少年の間に入る人影が見えた。
「エ…フィリップ殿下!」
エドは走ってきたのだろう。荒い息を整えながら、少年を冷たい目で睨んでいる。エドが私の腕を掴んでいる少年の手を掴むと、少年の護衛がざわついた。それでもエドが王族という事で、手が出せないようで様子を伺っている。
「手をお離しください。淑女にする行動ではありません。ジーク王子」
「関係ないだろう。こいつを俺の部屋に連れていくだけなのに、この国の許可がいるのか?」
ジーク王子! そうだった! この子、今日のパーティーの主役である、キース王国のジーク王子だ。挨拶だけはしたけど、興味ないからすっかり顔を忘れていたわ……
ジーク王子はフンと鼻を鳴らし、私の腕を離す様子がない。
「部屋に連れていく……? 王子ともあろう者が他国の令嬢を部屋に連れ込もうとするなど、あってはならない事だ!」
「つ、連れ込む!? そ、そんなつもりじゃないぞ!!」