婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される

 師匠だってそんな事できなかったし、周りにもいなかった。エドによるとその文献はかなり古くて文字もかすれていたため、なぜ魔法陣が作れるのかまでは分からなかったらしい。


「それでも文献の最後の1文が気になって、解読を頑張ったんだけどね」
「どんな内容だったの?」
「その魔力量の見える者は、何かを持っていない。あと、何かができないとあって、その何かがかすれて見えなかったんだ」
「す、すごい気になる……」


 師匠とエドのことだから当然修復の魔術もしたんだろうけど、読めなかったんだろうな。でもジーク王子に弱点といえそうな事があるのは、嬉しい情報だ。


「とにかくジーク王子は、かなりの魔術師だと思う。僕達の知らない魔術を使うのではないかな。気をつけるんだよ」
「気をつけなきゃいけないのは、あなたも同じ。ううん、標的はあなた達王族なんだからね」


 そしてもしそれが実行されるなら、私がエドを殺す燃料になるということだ。絶対にそんな事はさせない。


 落ち着くためにコクリと紅茶を飲み干すと、護衛達が控えている場所がざわめき始めた。なんだろうと思って振り向くと、護衛が止めるのも聞かず誰かが歩いて近づいてくる。


「またフィリップが一緒か」


 ぞくりとする憎しみを込めた声とともに歩いてきたのは、ジーク王子だった。
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