婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される


「ローズ、そいつはお前を気持ち悪い目で見てるぞ。早くこっちに来い。助けてやる」



 顔を見なくてもエドが怒りで、殺気立っているのがわかった。私も同じ気持ちで、ジーク王子を睨みつける。ニヤニヤと笑いながら手招きをするジーク王子に、「気持ち悪いのはそっちよ!」と突き飛ばせたらどんなにいいか。湧き出る怒りをなんとか抑えていると、また一歩ジーク王子がこちらに近づいてきた。



 どうしたらいいの? エドは私の前にいるけど、ジーク王子が何か魔術で攻撃してくるかもしれない。私がかばったところで捕まるだろうし、素直について行っても私の魔力を利用されてエドが攻撃される。



 エドもどうしたらいいか考えているのだろう。そんな私達の迷いにつけ込む様に、笑いながらまた一歩ジーク王子が近づいてきた。じりじりと近づいてくるせいで、よけいに焦ってしまい解決策が浮かばない。私は無意識に後ろに一歩下がった。パキリと小枝を踏んだ音が響くほど、誰もが固唾を呑んで見守っている。



 その瞬間ジーク王子の護衛の1人が、エドに襲いかかった。エドの護衛がいち早くそれを止めるが、私とエドはそのせいで一瞬ジーク王子から目を離してしまう。
< 62 / 119 >

この作品をシェア

pagetop