婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される


「バカな女め」


 そう耳元で聞こえた瞬間、魔力がグンと吸い取られるのを感じた。ジーク王子が私の腕をつかんでいる。魔石を当てている様子もない。下に魔法陣も無いのに、どうして魔力が吸い取られているの?


「サラ!」


 エドが私に手を伸ばしている。私も必死に手を伸ばすが後少しというところで、私とジーク王子の足元に魔法陣が浮かんだ。



 どさりと自分の体が地面に叩きつけられる。下に草が生えていたせいかそんなに痛みはなかったが、あきらかに私の家の庭ではないのが目を閉じていてもわかる。


「お待ちしておりました。ジーク殿下」


 少し年いった男性の声が聞こえてくる。恐る恐る顔をあげると、そこには1人の貴族男性とキース王国の騎士がずらりと私を囲んでいた。


 どうしよう。私の家からこの場所まで、転移させられてしまった。周りを見ると護衛騎士が10人と、50歳くらいの貴族男性とジーク王子だけだ。周りはうっそうとした木々しかない。地形が片方に盛り上がってるみたいだから、どこかの山の中?王都からだいぶ飛ばされちゃったみたいだ。
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