婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される


 どうにかしてエドのところまで、逃げられないかな? ひそかに指輪を通してエドの魔力を探ったが、かなり遠いところに飛ばされたらしく感知できない。


 私がゆっくりと立ち上がると、周りの騎士がサッと武器を向けてきた。ここまで囲まれたら、逃げられそうにない。しばらく様子を見て、隙を見計らわなければは無理だろうな。そう考えジーク王子を見ると、服の埃をうっとうしそうに払いながら貴族男性に話しかけていた。


「準備は整ったか?」
「はい、滞りなく。この女の子が例の魔力の持ち主ですか?」
「ああ、逃げると面倒だ。抱えて連れて行け」


 そうジークが命令すると、騎士の1人が私を乱暴に抱えた。荷物みたいに運ばれるのは嫌だけど、体力を消耗しないのはちょうどいいわ。少し冷静になって、逃げ道を探らなきゃ。


 それにしてもさっきの魔術は見たことなかった。普通は魔法陣を手やペンで書くものなのに、何もしていないのに魔法陣が現れた。

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