婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
ジーク王子はまだ動けているから、かなりの魔力を入れないと回復してしまいそうだ。私が考えていたより、ジーク王子の体は魔力耐性が強かったらしい。私はありったけの力を出して、よろめきながらエドのもとに行く。
「サラ。僕は王子だ。今度こそこの国を守るために、最後までやらなくてはならない」
エドが私が来るのを止めた。それはエドの後悔とフィリップ殿下の決意が、混じり合ったものなのだろう。ここでジーク王子が助かってしまったら、きっと同じことを繰り返す。いや、今回のことでもっと残虐な行為をこの国でしようとするだろう。だからこそ最後は王族のエドが、責任を持とうとしている。それでも私の気持ちも同じだった。
「じゃあ、私も、王族としての責任を負うわ」
私はそっとエドの隣に座り、ジーク王子の体に残り少ない魔力を一気に入れていく。ジーク王子はうなり声をあげたが、もうその声は弱々しい。私だってあのままエドと結婚していれば、同じ王族だった。私だって王族としての責務を放棄したようなもので、私が死んだ後は王家にも迷惑をかけたことだろう。
「サラ、サラはもう……しなくていい……離れてくれ」
「私と結婚、したいん、でしょ……? じゃあ私も同じ王族として……背負うわ」